最近何かと話題なラグビーのハカですが、「ずるい」とも言われています。
ニュージーランド代表「オールブラックス」の、ハカの印象が色濃く残っている方もいるのではないでしょうか。
ハカをする国としない国があるのか不思議に感じる方もいるかもしれません。そもそも、なぜハカは許されるのでしょうか?
他のスポーツの試合では会場を盛り上げるため、儀式のようなイベント事を見たことがある方もきっと多いはずです。
例えば、アメフトやバスケの試合会場ではチアリーディングがアクロバティックなパフォーマンスを華やかに披露します。甲子園では、吹奏楽部や応援団が選手に精一杯エールを送り続けます。
では、ラグビーのハカはずるいのか?どんな意味があるのか?
今回はラグビーのハカがずるいのか、マメ知識など徹底解説していきます。
【目次】
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ラグビーのハカはずるいのか?ハカ本来の意味とは
ニュージーランドの先住民族「マオリ」の伝統舞踊であるハカは、生命の祝福として始まったと言われています。
異なる部族が出会うシーンなどでもハカが行われていたほか、儀式や戦闘に臨む際にも披露されてきました。
なんと言ってもハカの迫力は圧倒的で、舌を思いっきり突き出して表現する踊りに最初は驚く方もいるかもしれません。足を踏み鳴らしたり、リズミカルに体全体を使い大きな掛け声に合わせて踊ります。
では、なぜラグビーの試合にわざわざハカを披露する必要があるのか?ハカをしない文化のチームにとっては面白くないのではないか?
結論としては、ずるい行為ではなくただ試合前に披露しているというニュアンスです。
ハカを披露したことで試合開始時間が遅れたなど会場全体に支障を出してしまっては本末転倒ですが、ラグビーの試合前にハカをしてはいけないというルールは今のところありません。
確かに考えてみるとスポーツの試合前に円陣を組んだりリラックスをしたりと、時間の使い方は自由です。
敵と対面する戦場へ向かう前に、準備運動としてハカで士気を高めていた時代もあった民族たち。ラグビーの試合前にハカを通して勇気を鼓舞し合っている、という儀式なんですね。
ラグビーの試合前に踊りや儀式などをしてはいけないというルールがない以上、禁止にする理由がありません。
かと言って、ラグビーの試合で日本代表が盆踊りをするのも見る側としても違和感を感じてしまいそうですが・・・
オールブラックスのハカの動画は、会場にいなくてスマホから見るだけでも物凄い迫力を感じます。
サモアやフィジー、トンガの国も、ハカのような民族的な儀式を披露します。名前はハカではなく、国によって儀式の名前や意味など異なります。
下記の動画では「Siva Tau」という儀式を、青色のユニフォームのサモア代表選手が披露しています。
チーム一丸となり集中力を高める儀式に、「かっこいいな〜」と率直に思います。力強い儀式に、試合を見ている側も緊張が高まる感じがします。
参考サイト: 100% Pure New Zealand https://www.newzealand.com/jp/feature/haka/
ラグビーのハカについてマメ知識
ラグビーでハカが披露された1888年
1888〜1889年にイギリスとオーストラリアで行われたラグビーの試合で、ニュージーランドチームは相手国の選手に対して初めてハカを披露しました。
オールブラックスは1986年までは、海外試合でのみハカを披露していました。
しかし1987年に自国開催となった第一回W杯をきっかけに、国内での試合でもハカをするようになりました。
オールブラックスInstagram: https://www.instagram.com/allblacks/
オールブラックス公式HP:
日本で初めてハカが披露された場所はラグビー場ではなかった
23歳以下で形成されるニュージーランド代表「コルツ」が、1958年に日本遠征に来ました。
羽田空港に到着したばかりのタイミングで、選手たちがいきなりハカを披露したと言われています。初めてハカを見る日本人は驚いたことでしょう。
もちろん空港での披露だけではなく、遠征中に秩父宮競技場で行われた試合の前にも披露しています。
ラグビーで披露されるハカは2種類ある
ニュージーランドのハカの種類自体は何種類もありますが、オールブラックスがラグビーの試合で披露するハカは2種類あります。
- Ka Mate (カマテ)
- Kapa o Pango (カパオパンゴ)
Ka Mate
ハカの中では珍しい戦いのための踊りとして、1820年代にマオリの族長によって作られました。
オールブラックスが1905年に試合前に披露するようになり、「Ka Mate」のハカが世界中で有名になりました。
ハカの知名度は上がったものの、ハカ=戦闘のための舞踊という誤解も同時に世界に広がってしまったことも事実でした。
そのため、マオリ系ニュージーランド人の間で「ラグビーでハカをさせるな」という運動も一時起こったようです。
〜日本語の歌詞〜
"私は死ぬ! 私は死ぬ!
私は生きる! 私は生きる!
(リピート)
見よ、この勇気ある者を。
この毛深い男が 太陽を呼び 輝かせる!
一歩上へ! さらに一歩上へ!
一歩上へ! さらに一歩上へ!
太陽は輝く!"
Kapa o Pango
オールブラックスのために制作期間1年ほどかけて、2005年に新しく作られたハカの種類です。
歌詞に出てくるシルバー・ファーンとは、ニュージーランドに自生するシダ植物の一種です。面白い葉で、裏返すと銀色をしています。
オールブラックスのユニフォームにもデザインされている「白いエンブレム」で、現地のお土産ショップでもよく目にします。1956年からは国章に使用されています。
ニュージーランドには、シルバー・ファーンに関する有名な逸話があります。
マオリ族は夜間に戦闘がある際には、シルバー・ファーンを月光に反射させてサインとして利用していた時代がありました。声を出さずに無言で敵陣に近づく、という賢い戦略です。
力強く芽吹くシルバー・ファーンは、ニュージーランド人にとってお守りのような存在なのかもしれません。
〜日本語の歌詞〜
"いいか、よく聞け!
戦いに備えよ!踏ん張れ!
我らは祖国と一つ!
ニュージーランドはここに響き渡る!
オールブラックスはここに響き渡る!
恐れと向き合え!
恐怖と戦え!
天まで届く勢いで
戦い上がれ!
高みを目指せ!
シルバーファーン!
オールブラックス!
シルバーファーン!
オールブラックス!"
参考サイト: "The New Zealand Fernmark Licence Programme" Leading the way
ハカを踊るのはラグビーだけではない
ラグビー強豪チームのオールブラックが、ハカを披露するイメージを持つ方もいらっしゃいますよね。
しかしニュージーランドでは、ラグビーだけがハカを披露する場所ではりません。例えばサッカーや野球、バスケットボールの試合前にもハカをしています。
また、結婚式や卒業式など冠婚葬祭など式典でもハカを披露することは文化として根付いています。
ニュージーランドのショッピングモールや街中でのイベントの際には、よく学生がハカを披露しています。ラグビーをしそうな体格の良い学生ばかりではなく、現地に通う普通の学生たちです。
オールブラックスがラグビーの試合で披露する闘志溢れるようなハカとは違い、また違ったかっこよさがあります。ハカは文化として存在しているのを感じました。
まとめ
ラグビーの試合前に披露するハカは「ずるい」「なぜ許されるのか」、という声もありますがルール上は問題ありません。
むしろ「ずるい」と言われれてしまうほど迫力のあるかっこいい伝統舞踊であることがわかりました。
文化的な背景から、ハカをしない国の試合相手やオーディエンスも敬意を持って見ていると言えます。ハカのパフォーマンスを楽しみに試合を見に来るオーディエンスもいるでしょう。
ニュージーランドだけではなくサモアやフィジー、トンガの国もハカを披露しています。これからは、ますます国際試合を見るのが楽しみになりますね。
日本語歌詞の引用サイト: "世界の民謡・童謡"